乙女ゲーム界隈で名作と名高い「夏空のモノローグ」。
シナリオが良いと評判だったので気になりつつも未プレイだったので、switch移植を機にプレイしてみました!
夏空のモノローグは、あることがきっかけで一年以上前の記憶を喪っている主人公「小川 葵」が7月29日を繰り返し、さまざまな人との交流を通じ、成長していく様子が描かれている作品です。
記事の前半は核に触れるようなネタバレはなしで紹介します。
世界観の概要などには触れますので、まっさらな気持ちでプレイしたいという方はご注意くださいね。
夏空のモノローグ、採点及び評価
以下、あくまでも個人的な好みの話ということで、これからゲームをプレイする方にとって少しでも参考になれば幸いです。ペコリ。
ゲームの概要について
タイトル | 夏空のモノローグ~AnotherMemory~ |
メーカー | アイディアファクトリー |
ジャンル | 夏色タイムループAVG |
発売日 | 2024年7月25日 |
プラットフォーム | switch |
価格 | 特装版:9,680円(税込)通常版:7,480円(税込)DL版:7,480円(税込) |
CERO | B |
ゲームの世界観について
舞台は海ほどには近い田舎町、土岐島市。
主人公、小川葵はいつもと同じように過ごしていた。
平凡な風景の中にそびえ立つ、超高層建築物、「ツリー」。
30年前、突如現れ、にわかに全国を騒がせたそれも、今やただ廃れた観光資源にすぎない。
そんな中、葵が所属していた科学部は廃部が決定。
面々は連れ立って、廃部前日である7月29日。「ツリー」観測へと赴く。
その日、その時、その瞬間-
ツリーは歌いだし、
-7月29日はループを始めた。
メーカー公式サイトより
夏空のモノローグの魅力
1.シナリオの完成度とキャラクター
本作は、廃部が決定した科学部、一日を繰り返すループといった暗くなりがちなゲーム設定なのですが、それらを吹き飛ばすコメディーパートがあり、シリアス過ぎず、コメディ寄り過ぎず、爽やかな読了感が堪能できる作品です。
大きな出来事が無いからこそ、何気ない日常のシーンが際立つのだと思いますし、各イベントを通じ、主人公と科学部員たちとの交流や、それぞれが抱えている問題や葛藤が細やかに描写されていました。シナリオの展開もそれぞれ違い、全てのキャラクターにドラマがあります。成長譚としても、最後まで飽きることなくプレイすることが出来ました。
ただ、糖度は低めかもしれません。個人的には乙女ゲームに肌色的な要素はさほど求めていないこと、それよりも、恋愛に発展していく過程がきちんと描かれている作品が好きなので、夏空のモノローグはツボでした。
キャラクターについて。主人公”葵”は、一年前までの記憶を喪っているという設定の為、自己肯定感が低いタイプですが、今の自分と向き合っていこうという、弱くもあり強さもある繊細な子です。
性格は真面目で努力家、特に目立った癖はなく、主人公の言動でおかしいなと思うこともなかったので、プレイしていてストレスが溜まるタイプではないと思います。
科学部のメンバーは主張の強いメンバーもいますが、基本的に皆性格が良くて優しいタイプでした。放課後の部活動、みんなでわちゃわちゃしているシーンも多くあったのですが、とても楽しかったです。
それぞれのキャラクターが背負っているもの、抱えていることがあり、個別ルートではそうした葛藤も踏まえて展開していきます。
2.多彩なシステムと、switchの追加要素で二度楽しめる
多彩なシステムにより、周回プレイも飽きずにプレイできるところが◎
ルートクリアの回数によって、共通ルートのシナリオの一部もしくは大半の内容が変化したり、画像のイベント選択時、スライドすることでシャッフルし、見たいイベントを優先することが可能です。同じイベントでも、登場人物や行動がかわるそう。これは面白かった!
なお、それぞれのイベントについてキャラクターが説明をしてくれるため、このキャラクターでこのイベントを見てみたい!という願望をかなえることが可能です。新規追加エピソードのほか、エンディングを見るごとに開放されていくオマケのストーリーも読み応えがありました。音楽も爽やかで、夏空のモノローグにぴったりの、素敵な曲ばかりでした。
夏空のモノローグはとても息の長いタイトルで、様々なプラットフォームの展開がありますが、switchは新規エピソードがあるということで、これから購入をするのならswitchがおすすめ!
気になるところ
- 序盤のストーリー展開がややスローテンポ
- イラストの好みが別れる
選択肢にもよるのですが、主人公が内向的な性格、一日を繰り返すという設定上、序盤はややスローテンポに感じました。イラストについては好みが別れるところだと思いますが、発売当時からの時間を考えると、今も当時のテイストを守っているところは素晴らしいと思います。
【平均・85.3 評価A】レーダーチャート
シナリオの完成度、多彩なシステムはいわずもがなの高得点です。また、嫌味のないキャラクター(声優さんの演技含む)、音楽も良くとても考えて作られている作品だと感じました。もう一度プレイしたいと思ったので、ゲーム性も高くしています。
【総評】どんな人におすすめ?・おすすめしない?
おすすめな方
- シナリオの良いゲームを探している
- 声優さんが好き
- プレイ後にあたたかい気持ちになれる作品を探している方
おすすめしない方
- 共通ルートが長めの話は苦手
- SF的な話が好みではない
- 現代・日常的な話が好きではない
総評として、「夏空のモノローグ」は、ジャンルとしては乙女ゲームですが、ノベルゲームが好きな方には是非一度プレイしていただきたい作品です。もう一度、明日も頑張ろう、とエールを貰えます。また、人の成長というのが物語に欠かせないと思うのですが、どのキャラクターも成長していく過程が描写されていて素直に感動しました。特典の小冊子目当てでステラセットを購入したのですが、悔いなし!
キャラクター別・感想(※ネタバレあり)
ネタバレあり。繰り返す一日と、明日を取り戻す切なくも温かいあの夏の物語
以下、ネタバレありますのでご注意下さい。
夏空のモノローグ、シナリオが良いと評判なだけあってとても良いゲームでした。また時間を空けてプレイしてみたいと思うくらい、ストーリーがしっかりしていて読み応えがありました。
世界の運命を担うわけでもなく、過激な展開があるわけでもない、ループ設定以外は日常的なお話なのですが、主人公がどこにでもいる普通の女の子というのも、このゲームの良さを引き立てていると思います。
明日を拒んでいた主人公が、明日に希望を見出すようになるまでの心の機微が丁寧につづられていて、プレイした後はほっこりあたたかい気持ちになりました。攻略キャラも然りで、成長譚が好きなのもあってこのゲームはツボでした。
私は乙女ゲームに必要のない性描写は正直望んでいないので、本作は学生らしい瑞々しさに甘酸っぱくも、少し恥ずかしいような気持ちを抱えながらプレイしました。カルピスのような、遠い夏の日の花火みたいな。
木野瀬 一輝 プレイ感想
目つきが悪いということでしたが、めちゃくちゃいい子、もといいい男でした!
部長やカガハルとのかけあいも面白かったですし、人が良くて振り回される、常識人なところも良かった。
実は彼、主人公が記憶を喪う前、葵と付き合っていた人(元カレ)なので、葵を見守るポジションはとても辛かったと思う。自分との事を全て忘れてしまった元彼女の側に居続けて、ルートによっては新しい恋愛を応援してくれるんですよね。彼の心中を思うと、どのルートも切なかったです。ちょっと切なそうな表情を浮かべつつ、背中を押してくれるシーンが何度かありました。アアアア!
そんな主人公と二人のルートは過去と現在を交錯しつつ進みます。お互いを思っているからこそのすれ違いももどかしかったです。ラスト、二人の進んだ先が良いものであると信じたい、良いエンドだったと思います。
加賀 陽 プレイ感想
名前に「陽」と入るだけあり、彼は明るく照らしてくれる太陽のような存在でした。常に軽口を叩いていてその場を盛り上げます。共通ルートでは先輩先輩、と懐いてくる犬のようで可愛かったです。
そんな彼ですが、個別ルートで彼は美術留学をするほどの実力の持ち主だと判明します。主人公も彼の色々な面に触れるうちにカガハルに好意を抱き、好意を打ち明けるのですが、今度ははぐらかすカガハル。これ酷いよ!
主人公のような内向的な性格の子が頑張って告白したのに、何言ってんだよカガハル!!と若干イラっとしたのですが、カガハルは絵の勉強で数年海外に行く為、葵の気持ちには応えられないと考えたそう。成程、それはそう考えるよね、と納得しました。
カガハルは子供の頃から絵の才能に恵まれていて、順風満帆だったかといえばそうではなく、苦労をしている子でした。人に対して笑顔の壁があるように感じるのはそのせいでしょうか。彼は以前、スランプに陥った時があったのですが、心を癒したのが主人公だった訳です。この一連の流れが綺麗でした。少しこのあたり、生徒諸君の飛島先輩のエピソードを思い出したのは内緒です。
明日を拒む主人公と、明日を願うカガハルの対比が印象的でした。
グッドエンドで二人は遠距離恋愛となるのですが、5年なら大丈夫なんじゃないかな。もしも気持ちが離れたとしても、再会して、再び、先輩先輩(そのころは「葵」かもしれませんが)駆け寄ってアタックしていそう。
余談ですが、ステラセットの特典小冊子で、カガハル視点のSSが掲載されています。カガハルが葵を思う気持ちが強く伝わってきたので、これ予約特典に出来なかったかなぁ…。
カガハルとの話は、希望に溢れたルートでこれぞまさに青春でした!
篠原 涼太 プレイ感想
ツンデレ枠だった彼が、まさかこんなに重たいものを背負っているとは……彼は記憶障害で、何度も同じ本を読んでいたり、同じ会話をしている訳ですが、ある意味ずっと前からループをしていたんですね。誰にも悟られないように苦しんでいたのがわかった時は、胸がきゅっと痛みました。高校生ってもっと楽しく過ごせる時期じゃないですか。隠していた様子がただただ切なかったです。
ループしている最中は、記憶障害の病状も穏やかになる(実際はそうでもないのですが)ということで、明日が来なければいいと願う気持ち、彼は人一倍切実だったと思います。彼と昔仲が良かったという元同級生も辛い。忘れられちゃうって多感な時期に受け止められないでしょう。関る人間を傷つけてしまうからこそ、距離をとろうとしていたんだなあと…ああ切なくて涙が出ちゃう。
ハッピーエンドでは、主人公も傍にいることを選ぶのですが、うーん、これはメリバ寄りですかね。というのも、最初は気持ちの部分で頑張れたとしても、普通の女子高生が背負える範疇を超えているからです。主人公自身も、過去に色々ある繊細な子なので余計にそう感じたのかも知れません。進学して、就職して、その先々も寄り添っている二人の未来が想像できなかった。だからこそ刹那的で美しいラストシーンなのかも知れません。
物語として儚くもあり綺麗な終わりだとは思いますが、いつか病気が解明される世界線があるといいのになと願います。
浅浪 皓 プレイ感想
教師というよりは、兄のように皆を見守ってくれる先生との恋愛は、恋愛感情を抱くまでの過程が丁寧に描かれていました。先生の話は恋愛が主軸というよりは、先生の弟さんがフォーカスされ、家族との再生がテーマだったように感じます。
弟さんは不治の病を抱えていて、先生も弟の医療費の為に新しい学校に行くしかない、顧問がいなくなるので部活は解散せざるを得ない、となるのですが、部活じゃなくて同好会でも集まればいいのではないかな。駄目なんだろうか。部室はないかもしれませんが、どこかの空いている教室なら使わせてもらえるのではないでしょうか。それこそファミレスでもいいですしね。おっといけない、話が逸れました。
個別ルートでは弟さんの病気を中心に展開していくのと、そのままですが、教職に就いているので、先生とは微糖程度だったのも良かった。現役女子高生相手に先生側が積極的だったらどうかと思いますしね。
三人の願いが叶うことを祈ってしまう、綺麗なストーリーでした。
沢野井 宗介 プレイ感想
部長!共通ルートではハチャメチャな人だなあ…という印象しかなかったのですが、個別ルートでは真相に触れるストーリーでぐぐっとシリアスになりました。
彼の父も研究者なのですが、父親はツリーの研究に携わっていたそう。幼い頃、事故で亡くなった父を事故から救うために、彼は一人子供の頃からずっとタイムリープについて研究をしてきたとのこと。日常生活、主に恋愛において唐変木だったのも合点がいきました。科学部の部長というだけあって、一番科学をしていたルートだったように思います。
科学部は、部長がタイムリープについて研究したいために設立した部活だったこともあり、タイムリープで歴史を変えることにより、科学部そのものが無くなってしまうかもしれない。部長、葵、そして皆も悩みますが、出した答えは友情そのものでしたね。見事にタイムリープを成功させて、さあ、いざ父に再会…と部長はリープ先で父に会おうとします。しかし、沢山の時間を仲間と過ごすうちに、過去よりも皆との未来を願うようになった部長は声をかけませんでした。
このシーンと決断は本当に感動しました。
戻ってからもわちゃわちゃしている様子も良かった。部長が成長していく様子が微笑ましかったルートでもありました。足元だけのキスシーンって新しい。お幸せに!
綿森 楓 プレイ感想
実質、真相ルートということで、今まで謎だったことが色々と判明していきます。長い長い年月の間、主人公や皆を見守っていたという彼。実は部長の父の時代からのタイムリーパーだったそう。
主人公とはツリーと共鳴しあう者という共通点がありました。
一年以上前の記憶を喪っている主人公。そんな葵を拒んでしまった母。二人には深い溝があるのですが、このルートでは、葵の勇気によって家族との絆を取り戻します。ナイスアシスト先生!そして、周りに馴染めなかった主人公ですが、読書を通じて科学部以外の友達も出来ました。そう、科学部以外にも居場所を自分で作りました。
そうだよね、学生の頃って家族とのつながりも密接だし、教室に一人って世界が終わったような気持ちになるものね。良かったねええええ葵ちゃん!よく頑張った!
明日を恐れず明日を望むようになった葵。その結果、ループしなくなった先に、科学部や楓の姿もあり、長い間の苦労が報われたなとほっとしました。
夏空のモノローグ、どのルートもそれぞれ違った展開で、読み応えのある作品でした。人の成長というのが物語に欠かせないと思うのですが、どのキャラクターも成長譚としても素敵な作品だったと思います。涙すると言われていましたが、それ以上に爽やかであたたかいお話だったかなと。
プレイして良かった。ステラセットを購入して悔いなし!強いて挙げるのなら、カガハルと部長の話が好きです。
長文にお付き合いしてくださって、ありがとうございました
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