新年早々は何にしようかと思ったのですが、レビューサイトなどで名作と名高い「WHITE ALBUM2」をクリアしたのでつらつら感想を綴って参ります。ネタバレしかないので未プレイの方お気をつけてください。
結論から。本作は素晴らしいノベルゲームでした!ADV好き、恋愛ゲーム好きとして文句なしの作品です。
皆さんが絶賛するのも納得の完成度の高さに驚きました。評価をするのなら、AかSくらいになるかと。
WHITE ALBUM2が、傑作だと言われる所以について考えてみる
本作が優れた作品だと感じた理由は沢山ありますが、高校生から社会人になるまでの長い時間軸のなかで、どのキャラクターも成長していること、脇キャラも含めて生きている点が最近ではなかなか味わえないゲーム体験でした。
乙女ゲームのクロックゼロとか比較的長めですけど、社会人になるまでって最近のゲームだとあまりない気がします。
付き合ったその後の話も、そこからの話もしっかり描かれているので読み応えがあります◎
物語を彩る音楽が、それぞれの場面にマッチしていて素晴らしかったです。
スペシャルのミュージックモードで作中で流れた曲を聴けるのが、ホワイトアルバムの世界を堪能出来て良かった!
作品の性質上、音楽は欠かせないものですがどの楽曲も素敵でした。特に物語の要所要所で流れる、綴る想いが印象に残っています。音楽もストーリーも、ドラマチックで胸が締め付けられる展開が続き、切なく響くのがとてもいい!!今更ですがCD欲しいです。
本作をプレイして、まず思ったこと
私がプレイしたのはPSvita版です。ゲームレビューで性別についてわざわざ記載するのはどうかとも思いつつも、WhiteAlubm2は男性向けPC18禁ゲームなので、主人公に共感できるだろうか・女性である自分が果たして楽しめるのか?と始めるまで不安な気持ちもありました。
結果、もっと早くプレイしておけば良かったと心の底から思いました。凄くいい!
私と同様にシナリオの良いゲームを探している方で、本作が男性向けゲームということが気になっている方がいらしたら、プレイしないのはかなり勿体ないですよーと言いたい。
vita版で具体的な性描写はカットされていますし、何より、女性向けのゲームではなかなか見られないストーリー展開でやり応えがありました。女性向けのゲームだと付き合うまでという作品が多い印象です。両想いの先、そこから先の心理描写だったり、人間ドラマだったりを知りたい。
そんな方にオススメしたいゲームです。そして、本作と同じくらいやりがいのある作品が、もっと増えたらいいのにと思います。
ネタバレあり・プレイした感想をもう少し語ってみる
このゲームの主軸は三角関係をテーマに描かれた作品なので、人によってはキャラの好き嫌いもあるかもしれません。
そうした要素を抜きにしても、精密に練られたストーリーや、心の機微を丁寧に描いている展開、また、全てのエンドが意味がある終わり方をしていることからも、シナリオが練られた作品だと感じました。
プレイする前は、三角関係ということで、古くは気まぐれ☆オレンジロードの鮎川とひかるちゃん、あるいは、いちご100%的にヒロインの二人の間を行き来するゲームだろうと思っていたのですが、いやーーさすがです。
もともと18禁のゲームというだけあって、人間心理の深いところまで描いた作品でした。ルートによってはドロドロしていますが、個人的には文化祭前の浮き立つような高揚感や、大学のゼミの打ち上げの様子など、自分が学生だった頃を思い出し、懐かしく思うシーンもあってドロドロが中和されていたように思います。
主人公春樹の優柔不断っぷりと、「誠実な自分」(そんなことない)に酔ってるところと無自覚なところにイライラしましたが、それもまた人間らしいというか。
根っからの悪人ではないのと、彼の育った環境が特殊だったこともあり、イラっとするけれど憎めないキャラでした。何より本作のヒロインふたりとも、彼が揺れてしまうのもわかるくらい魅力的なキャラクターでしたしね。
そう、セクシーなのキュートなのどっちもタイプです。芸術家らしく繊細で天邪鬼、心を許した相手にだけ時折見せるギャップが可愛いかずさ、素直で一途、どこまでも真っすぐかと思えば、強かさを感じさせる雪菜。二人とも方向性の違う美人とくれば選べないですよね。鮎川とひかるちゃんだって何年迷ったと思ってるんだ。
話を戻しまして、高校時代、ひょんなことからバンドを組むようになった主人公春樹、キーボードのかずさ、ボーカルの雪菜。
実際の世界で、高校生の頃は狭い世界で惚れた、別れることって結構ある思うのですが、進学して世界も広がり、出会いも当然増えて、ずっと一人の相手を思っているのって、ある意味ファンタジーだと思うんですよね。
かずさは高校卒業後は海外、芸術の世界にいるので事情が違うかも知れないのですが、少なくとも日本の大学に進学した雪菜の周りには大勢の男性がいた訳で、作中でもそうした描写がありました。ずっと春樹を慕う理由が少々弱いかなと自分は感じました。
「あの人じゃないと駄目」、は大体が幻想だ
かずさが春樹ではないと駄目で特別な理由はわかります。雛鳥の刷り込みのようなものでもあると思うのですが初めて認めてくれて、外の世界に引っ張り出してくれたきっかけとなった特別な相手ですからね。だからこそ、春樹と雪菜が結ばれるエンドの時のかずさの気持ちを思うと胸が痛みました。
一生春樹だけだ、なんて言わないで!いや、言ってもいいけど次の恋愛をちゃんとして幸せになって欲しい!世の中は思うよりも広いから、まだ出会ってないだけだよ!と友達モブとしてかずさに真剣に言いたくなりました。
一方で、春樹はかずさがパートナーだと最初は頑張れたとしても、長期的にみると疲れてしまうのではないかと最終章をプレイしていて思いました。かずさが愛されていることを実感し満たされ、春樹に対して心から信頼を置けるようになったなら、やっていけると思うのですが、不安定な最初はちょっと大変そうだなあ。
そして春樹は、本能的に惹かれるのはかずさだとしても、生育環境から女性に不信感がある反面、無自覚だと思うのですが母性を求めています。となると、愛情深い家庭で育ち、成長するにつれ包容力を持つようになった、愛情表現が上手な雪菜の方がきっと良いスタートが出来るでしょう。
雪菜は春樹ではなくてもいい。むしろ何度も裏切られた春樹よりも安心感を抱ける人、別の新しい相手とスタートした方が長期的に見て幸せになれると思います。ルートによっては執着のようにもみえました。
このあたりのキャラ設定やバランスがリアルだなと感じました。現実にもこういうパターンってあるかも、と思う塩梅が流石だなと。
それぞれのルートについて、の話
高校生の時に、雪菜が春樹に告白したことを「奪った」とする表現が何度かあるのですが、春樹は告白の際フリーです。春樹も雪菜の気持ちを受け入れました。
一連の流れからすると、そもそも「奪う」はちょっと違うと思いませんか?それよりも、先々を見据えたパートナーがいる相手と知りつつ、気持ちを伝えたり、性的関係を持つほうが「略奪」になるではないかと。婚約破棄で双方を訴えることも出来るでしょうしね。
ゲーム序盤は空気が読めない、幼さの目立つ雪菜でしたが(なぜ3人にそれほどこだわるのか?)ストーリーが進むにつれて印象が変わっていきました。春樹と付き合い深い関係になったことで、「この人を守りたい」という母性がそうさせたのかと思っています。
だからこそ、雪菜は強い。強いから傷つかない訳ではなくて、弱さも彼女は持っていて、気が付いたら雪菜が幸せになる選択肢をずっと探していました。伊緒!もう誰か友達紹介してあげてよ!
まあそれでも、本人が傷つくのがわかっていて、それでもその人といたいと望むのなら、もう、外野はどうしようもないよなあ、とも思ったり。
かずさルートでは、プレイした多くの人が胃が痛くなったと表現している、雪菜の弟くんが「姉ちゃんの5年を返せよ!」と主人公を殴った場面で溜飲が下がりました。これは私が女性だからでしょうか。人の心は移ろうものですし、仕方ない、仕方ないかもしれないけれど、春樹ー!!!ってずっと思ってた。何なら高校生編あたりから。
恋愛でどちらか一方が悪いということは無いと思うのですが、プロポーズしてから心変わりしたという点にフォーカスするならば、殴られるだけの事を春樹はしていましたから。
なので、弟よ良く言った!!春樹と二人で海外に行くことを許してくれたご両親の気持ちを、結果として踏みにじった訳ですから、そこはきちんと受け止めてください。
先に書きましたが、かずさは春樹でないと駄目だと思う場面が多々あったことと、学生の頃はかずさ自身もいっぱいいっぱいで、もともとの対人関係スキルが低いこともあり、衝突から逃げるように海外に行くしかなかったのだと思いますしね。その時の対比として、かずさと雪菜がぶつかり合うシーンは成長したんだなと、感動しました。
かずさは成人してからも不安定なところが残っていたからこそ、今度は幸せになって欲しいなと思うし、再会が結婚する前で良かったです。
そうそう、最後の最後まで主人公を信じて寄り添おうとしてくれた武也は、友情に厚いキャラでしたね。このゲームの良かったところに、人物描写が精密で全てのサブキャラが魅力的だったことも加えたい。伊緒と上手く行ったルートでは良かったねーと心から安堵しました。
雪菜トゥルーエンドでは主人公に、これまで長年苦労をかけたのだから絶対に雪菜のこと幸せにしなさいよ!!と心の底から思いました。雪菜は春樹と一緒なら幸せだと、心の底から思える強さと覚悟があるので大丈夫でしょう。
長々書きましたが、群像劇としても恋愛としても、人間ドラマとしても引きこまれ、彼らの人生を追体験できる、本当に素晴らしい作品でした。うん、プレイして良かった。終わってしまったのが寂しくなるくらい、久しぶりに夢中になりました。
今後も遅ればせですが、丸戸さんの作品を辿っていく予定です。
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