「泡沫のユークロニア」は、空中都市、凍玻璃(いてはり)を舞台に繰り広げられる、女性向け恋愛シュミレーションゲームです。
プレイヤーは貴族で当主でもある主人公、雛菊を通じ、数々の敵や世界の謎と向き合っていく中で、たった一人との男性と特別な仲になっていくー
記事の前半は核に触れるようなネタバレはなしで紹介します。
世界観の概要などには触れますので、まっさらな気持ちでプレイしたいという方はご注意くださいね。
泡沫のユークロニア、採点及び評価
以下、あくまでも個人的な好みの話ということで、これからゲームをプレイする方にとって少しでも参考になれば幸いです。ペコリ。
ゲームの概要について
タイトル | 泡沫のユークロニア |
メーカー | ブロッコリー |
発売日 | 2024年4月11日 |
プラットフォーム | switch |
価格 | 8,580円(税込)~ |
CERO | C |
ゲームの世界観について
空に浮かぶ箱庭、それは偽りの理想郷――
舞台は空に浮かぶ箱庭。理想郷と名高き、栄えた都。
――空中都市 凍玻璃(いてはり)。
名家に生まれ、不自由なく育った
外の世界に憧れを抱く主人公 雛菊(ひなぎく)。18歳になった主人公はある日、
記憶を失った青年 矢代(やしろ)との出会いをきっかけに理想郷の貌(かお)に隠された真実を巡る事件に巻き込まれていく――
メーカー公式サイトより
システム・ED種類について(ネタバレなし)
泡沫のユークロニアは、一般的な乙女ゲーム(ノベルゲーム)で、選択肢によって好感度が変動するマルチエンディング方式のノベルゲームです。作業要素はありません。
自動文字送り、選択肢スキップ、各章ごとの好感度調整などゲーム周りのシステムは一通り揃っているのでストレスなくプレイ出来ます。
エンディングは大きく二種類あり、ベストエンドとバッドエンドからなります。
本作はCERO:Cですが、基本的に謎を解き明かしたり、敵と対峙する場面が多く恋愛的な糖度は低めです。
Cは肌色というよりも、作中で戦闘シーンがあるのでそちらの要素を占めていると思います。そこまでグロテスクな描写はありませんが、展開によっては流血シーンもあります。
とはいえ、同じ制作チームが手掛けた、ピオフィオーレの晩鐘の戦闘シーンよりは生々しくないので、あちらが大丈夫だったならおそらくは平気かと。
泡沫のユークロニアの魅力
1.キャラクターデザイン及びキャラ属性の幅広さと、美麗なグラフィック
攻略キャラクターの属性は、主従関係、幼馴染、頼れる兄貴分、二面性や癖のあるキャラクターと多岐に渡っています。
このあたりの属性がツボな方は楽しめるのではないかなと思います。私は普段、主従関係のお話では萌えないのですが、この作品はツボでした。
サブキャラも魅力的なキャラクターが多く(攻略したいキャラクターがいました)、皆それぞれ背負うものがあるからか、精神年齢の高いキャラクターばかりです。一部そうでもないキャラもいたので、その対比も面白いなと思いました。
スチルに関しては、RiRiさんの描かれるスチルはどれをとっても美しかったです。背景も凝っていて、主人公の部屋や室内も可愛いかったです。ある行事のイベントスチルは幻想的で眼福でした。
グラフィックも含めて、世界観を大切に丁寧に描かれている作品です。
2.新たな試み、Live2Dシステム搭載
静止画だとわかりにくいと思うのですが、キャラクターの髪や衣類が風で靡き、目線もかなり細かく動きます。キャラの息遣いを感じられるようなモーションによって、よりプレイヤーは没入感が得られます◎
ノベルゲームだとどうしても文字を読むだけになってしまうので、こうした動きがあるといいですね。
気になるところ
- 主人公の言動が、立場や世界観とマッチしていない(言葉遣い含む)
- シナリオ展開がやや金太郎飴風味で恋愛要素が薄め
主人公の雛菊はとても良い子です。ですが、その生育環境を鑑みても、貴族の当主としては言葉遣いがやや幼く感じる場面がありました。
両家の子女ともなれば、物心がつく前から礼儀作法や言葉遣い、振舞いなど、徹底的に叩き込まれるのではないかと。
感じ方には個人差があると思いますので、気になる方は体験版をプレイしてみてください。
シナリオはキャラクターにもよるのですが、恋愛過程があまり描かれていないと感じました。ノベルゲームなら凝った世界観の作品だと思いますが、乙女ゲームだと考えると恋愛要素が少し物足りないなといった印象です。
【平均・76.3 評価C】レーダーチャート
キャラクター(声優さんの演技含む)、スチルの美しさが際立っていたので上記の点数です。
シナリオに関しては良くも悪くも薄味で、個人的な好みになりますが、繰り返しプレイしたいかと言われるとどうかなと思ったのでゲーム性もこのあたりで。
【総評】どんな人におすすめ?・おすすめしない?
おすすめな方
- キャラクターデザインに惹かれる
- 声優さんが好き(お姫様呼び)
- 障害のある恋愛に惹かれる
- 主従関係、頼れる兄貴分、幼馴染、二面性や性格に癖があるキャラクターが刺さる方
- Live2Dシステムを体験したい
おすすめしない方
- 恋愛過程が丁寧に描かれた作品が好み
- 主人公(ヒロイン)の言動が気になる方
総評として、「泡沫のユークロニア」は、さくさくと進められて、乙女ゲーム初心者の方にもお勧めできるゲームです。また、凝った世界観のお話が好きな方にもおすすめ。
シナリオに重きを置いたゲームだと思うのですが、展開が早い分、個人的にはあっさり進んだ印象。全体的な糖度は低めなので、濃い恋愛を楽しみたいという方には少々物足りないかも知れません。
所謂、ノベルゲームで作業もなく、システムも揃っているのでストレスなくプレイ出来ると思います。
キャラクター別感想(※ネタバレあり)
ネタバレあり。箱庭世界の恋、愛とエゴは紙一重か?
以下、ネタバレありますのでご注意下さい。
泡沫のユークロニアは、ピオフィの完成度を期待してしまったからか、シナリオ的には少し物足りないなと感じました。問題についても割と淡々と進み、恋愛要素もあっさりしていて、特に好意を抱いていく過程をもう少し表現して欲しかったなと思いました。
ただ、作品単体としてみると凝った世界観や美麗なイラストは上に書いた通りです。新しい技術を採用した立ち絵も良かった。
この作品は人によって評価が分かれる作品だと思いますが、当サイトではシナリオ重視でレビューをしているので、トロコンをした上で、ショート感想で書いたとおり、ピオフィーが【A+】なら、本作は【C】というのが私の感想です。
2度プレイしたいと思うかどうか、が本サイトでの【A】以上です。
自分自身がゲームを探す際、これって結局どうなんだろう?面白いのかな?と、購入を迷った事もあり、これから購入する方にとって参考になればと思い、特にレーダーチャートはわかりやすく点数配分をしたつもりです。
実はこのグラフ、何度も作り直したのですが、やや辛口になってしまっていたらすみません。期待値が高くなってしまったけれど、作品として一定値は超えている作品だと思います。
さて、キャラクター別の感想、まいりますー!
【帷】
どのルートでも頼れる兄貴で、実際に良いお兄ちゃんでした。とても性格が良くて、口が悪くても腕は立ち、いざとなると見守ってくれる。これは惚れるよなーーと思いながらプレイしていました。
えっ、病気?病気は治らないの?!!!と思ったのですが、真相ルートで症状が緩和された的な描写があったので少し安心しました。
彼は生い立ちの不遇、度重なる身内の裏切り、しまいには病気と背負うものが多すぎて辛い。とにかく幸せになってほしいと願いながらプレイしていました。
自身の病気もあり、身分差のある雛菊とは一線を越えないままというのも彼らしいですね。頼もしく、健気で、男気があって色気もある、好きなキャラです。
【露草】
お話が進むにつれ、運命属性はキミだったのか!と驚きました。露草も、どのルートでも協力的で(雛菊に恋をしていたらそうなりますよね)性格が良く優しいキャラでしたね。
あまりキャラ設定や運命属性が活かされていないように感じたので、もう少し子供の頃を掘下げてほしかったなと思ったり。それにしても、双子キャラってなぜ両方攻略出来ないんですか?おかしくない?
兄弟ともに魅力的なのになんだろう、バグかと思いますよね?双子は乙女ゲーム界で両方攻略できない呪いがかけられているのでしょうか。
BADでは、それぞれの道を行くという別離エンドになるのですが、露草が雛菊の事を「伴侶にはしない、向かない」と断言していたあたり、幼少期から帝王学を学んできた様子が垣間見られました。
まあ、実際、雛菊は向かないでしょうね。清濁併せ飲むあたり、彼の冷静さと賢さが感じられ、切ないけれど良いエンドだったと思います。
一方、彼とのBESTはゲームの中で一番安心して観ていられるお話だったのかなと。露草と雛菊は身分差もなくスムーズに進みそう。淡雪も認めざるを得ない。良き良き!
【依】
依は「危険度」から察するに、ピオフィの楊ポジションなのかと思いドキドキしながらプレイしていました。
公式でも性格が悪いと言われていましたが、そうでしょうか?考えてもみてください。
出来のいい兄弟がいる(それも腹違い)、不出来側の兄弟って、国際的・歴史的にみても問題があって拗らせてるじゃないですか。大河然り。
それも身分重視の世界観、依のように選民意識が強いとくれば、彼の言動はそこまでおかしいとは思いませんでした。むしろ捻くれるよね、という感じです。(※犯罪は別問題です)
性格が悪いキャラクターといえば、ブラハの柿崎藤吾という鬼畜なヤンデレキャラがいて、私は彼が推しなので、依の性格くらいなら…と思ったり。プレイヤーがこれまでプレイしたゲーム遍歴によっても、依の評価は変わってきそうですね。
話を戻して、勿論、依の犯した罪は重く、罪はきちんと償うべきです。BESTではそのあたりが甘く感じたので残念でした。
人を殺したのに、一部制約はあれど、ほぼ自由の身(婚約者と一緒に過ごせる)ってどうなのかと。
そうはいっても彼らはお貴族様ですし、勧善懲悪ではない世界観はそれはそれで好みなのですが、それでも、10人以上人を殺して、ここまでのご都合主義は微妙です。
依は主人公との絡みが多く、惹かれていく過程もきちんと描かれていただけに、その点は気になりました。
私は拗らせつつも色気のあるキャラクター属性がツボなので、依自身は割と好きです。例えば、服役して牢に入るなりして、雛菊と文通をしながら、雛菊から貰ったハンカチを大事そうにそっと眺め、再会に想いを馳せる……くらい、距離感のあるベストエンドだったら間違いなくツボでした。
最後に加えるとお兄さんがかなり好みです。依のBADはかなり刺さったのですが、お兄さんとのエンドがあっても良かったと思う。攻略させて欲しい!悲しみでハンカチ、ぎゅっと噛みしめるよ!
【矢代】
てっきり、矢代が運命キャラかと思っていました。ガチガチの攻略制限がかかっていたり、他キャラのルートで味方をしなかったり…という描写もあり、敵側のスパイなのだろうなというのは早い段階で察しがつきました。
メインヒーローの位置付けだと思いますが、矢代ルートはシナリオが恋愛重視というよりも、敵に立ち向かうことが重視されていたこともあって、恋愛的にはわりと淡泊だったように思います。
プレイ時のメモを見ていても、このルートはあまり印象に残っていないんですよね。
ちょっと、いやかなり勿体ないなあ…。彼は程よい二面性もあり、祖国を裏切れない設定があるともっと面白くなっただろうだけに、そのあたりを掘下げて欲しかったです。
もとの国での地位はかなり上位とのこと、東に春とあったので帝なんですかね。まあ、そもそもそんなに高貴な身分の人が敵国に潜入スパイはしないだろうし、うーんちょっとわからない。
【淡雪】
いやーーー淡雪。重たい男だった。彼を一番最後にしたのは長くなりそうな予感がしたからです。
ネタバレなしでも書きましたが、主従萌えはしないタイプだったのですが、淡雪はツボでした。本当は料理やお菓子作りは苦手なのに、雛菊の為に頑張ってマスターしていたんですね。うんうん、健気ですね。
と思っていたら、ラストあっさり一線超えていて、びっくりです。このゲームで一番びっくりした。全然淡くないじゃない。
依様とは婚約していたし、身分差もさほどなかったけれど、淡雪は従者で、この世界観だと貴族と平民の恋愛はご法度じゃないですか。積み重ねてきた年月や重みが違うとはいえ、幼い頃から自分が大事に守ってきたお姫様と一線超える?越えられるの?そうかそうか。俺の屍を越えてゆけ。
一線を超えてしまうと、雛菊との関係は紫の上どころか、愛人ですらなく、矢面に立たされるのは主である雛菊なので、身分問題がある程度解決されるまで時間がかかったとしても控えて欲しかった。帷のように。
ここにきて、帷の男前度が俄然光る訳ですね。うーん、エゴと愛とは紙一重とはこのことか。
まあ、そうはいっても想い合う、若い男女が一緒に住んでいたらそうなってもそれは不思議ではない訳です。むしろ一線を越えるのなら、その葛藤こそが萌えどころだと思うので、CERO的に詳細は不要にしても心情を割愛しないで欲しかった。
淡雪のルートで、雛菊からのプレゼントにそっと彼がキスをするスチルは美しく、私に主従萌えという新たな萌えを提供してくれました。
ところで、依ルートのバッドエンドの淡雪は私へのご褒美でしょうか。嫉妬に駆られたものの報われない、最後まで不憫なそれはそれは素晴らしい淡雪でした。
【真相ルートとその他諸々】
真相ルートでは、黒幕が明らかになります。そして、世界の秘密を守っていた重要なキャラも明らかに。彼らは色々なルートで動いていたのと、矢代ルートで匂わせがあったので、ああこれは確定かなと思っていました。
雛菊は、外に憧れている設定があったので、真相ルートではてっきり外の世界に出るのだろうと思っていたのですが結局、出ないまま。淡雪ルートのバッドで外の世界に触れたのみでしたね。どうも一部ルートでは、設定が活かしきれてない印象です。
そして、追加DLCコンテンツがあるとのこと。それぞれの問題もきっと解決、DLCで明らかになるのでしょう。小冊子やFDで完結する作品はシナリオがどうにも薄く感じてしまうのは私だけでしょうか。
本作でしっかり解決した上での続編なら大歓迎なんですけどね。
なんだかんだいいつつ、追加コンテンツも多分買います。石蕗さん攻略できるといいな。
長文にお付き合いしてくださって、ありがとうございました
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